労働組合って何?

最終更新日2021/7/27

「労働組合」、耳にしたことがあるけれど、何のためにあるのか?何をしているのか?実はよく知らないという方もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで今回は、「労働組合って何?」を理解するための「起源」から「役割」までを駆け足でまとめてみます!

労働組合の起源


労働組合の起源は、イギリスといわれています。

中世に、すでに労働者が団結して雇用者に対抗したという記録があるものの、はっきりと団体として継続した活動が始まったのは、産業革命の時代。18世紀半ばのことです。

紡績業などで大量生産がはじまり、生産に必要な設備や材料が、集約されるようになりました。そういった工場を設置・運営するには大きな資金が必要となり、資本家・経営者と、作業者(労働者)といった役割の区別が明確になり、また、固定化されるようになったのです。

そのために、賃金や労働条件をめぐった団体交渉が始まるようになったといわれています。

イギリスで労働組合が合法化されたのは1890年のことです。

日本においては、明治維新後、欧米同様に産業の集約化が進むにしたがって、労働者の労働環境をめぐる争議や団結の動きが見られ、明治30年代(1897年〜)に労働組織がつくられ始めました。

労働組合の原則

労働組合は、1948年に採択された国際労働条約・第87号「結社の自由及び団結権の保護に関する条約」に規定され、労働組合をつくる権利(団結権)・組合活動をする権利(団体交渉権)は、2人以上の労働者が合意することで労働組合を結成できます。日本は1965年に批准しています。日本においては、労働者が労働組合を組織する権利は日本国憲法第28条で保障され(「団結権」のほか「交渉権」「行動権」を保障)、手続きや具体的な機能などについては「労働組合法」で定められています。

これによると、労働組合とは、「労働者が主体となり、自主的に労働条件の維持改善やその他経済的地位の向上を図ること」を主たる目的とし、

必要な要件は、

  • 労働者が主体となって組織すること
  • 使用者側の役員や、雇用・昇進・異動などについて直接の権限をもつ立場にある労働者など、使用者側の利益代表者の参加がないこと
  • 使用者側から経済上の援助を受けていないこと
  • 共済事業またはその他福利事業のみ、政治運動または社会運動を主目的としないこと

となっています。

労働組合の種類

労働組合には様々な種類があり、組合員の範囲によっておもに以下のように区分されます。

  1. 職業別組合:もっとも古典的な形態の組合で、同じ職業・職種につく労働者が結成。
  2. 産業別組合:職種によらず、同じ産業につく労働者が結成する横断的組合。今日の欧米ではもっとも代表的な組織形態で、当該産業において、地域ごとや全国的などの各レベルで団体交渉が行われ、結果として労働協約が結ばれると、各企業はその協約について対応を行います。
  3. 企業別組合:特定の企業・事業所ごとに、そこに所属する労働者が職種の区別なく、組織する労働組合。日本では大部分の組合がこの形態をとっています。各企業の実情に応じた労使交渉が行われ、結果として協調的な労使関係をつくりだすなど、「日本的経営」の特徴の一つとも考えられています。
  4. 一般組合:職種や産業、所属する企業によらず、すべての労働者を対象とする組合。この中には、主に中小企業で働く労働者などの個人が、産業や職業にかかわらず地域ごとに加入する合同組合も含まれます。

日本においては、各企業別組合では対応できない課題への取り組みを目的として、企業別組合が集まって、産業別組合を形成している場合もあります。さらに地域ごとの産業別組合が集まった全国的組織もあります。

労働組合の役割


労働組合の目的は「労働者が主体となり、自主的に労働条件の維持改善やその他経済的地位の向上を図ること」にあります。

賃金や労働時間、育児・介護・病気などと仕事の両立、人事評価や不当な解雇、ハラスメントなどの労働条件や職場環境の問題を、ひとりで経営者(使用者)に訴えるのは難しく、また、改善につながる可能性は低いと考えられます。労働組合は、そういった問題意識を共有する個人が集まり、総意として団体で交渉することで、労働条件や職場環境の向上を実現を目指すのです。

日本に多い企業別組合の場合には特に、労働組合での活動を通じて、直接的に仕事で関わることのない同僚ともつながることができ、組織内のコミュニケーションが活性化される機会にもなります。「横のつながり」を通じて、働くうえでの悩みやキャリアの相談をしたり、助けあったりすることができ、その会社で働くことのモチベーションにもつながっていきます。

これは、労働者(従業員)にとってだけでなく、経営者にとっても望ましいことです。会社に対する不満や不安を従業員同士が話し合い、労働条件や職場環境の向上を目指すことは、そのプロセスで組織の風通しのよさや連帯感をうみだし、結果として、従業員の安心感や働きがい、労働意欲を高めることにつながれば、会社の成長や発展につながっていきます。実際、経営者にとっては、労働組合を通じて、従業員の意見や提案を企業経営に反映することができたり、また、会社の経営状況や方針を社内に伝え、理解を得ることができるなど、運営の安定化に役立っていると考えらることも多くあります。一見、対立構造のようにも見える「労使」の関係ですが、両者の視点から、情報や課題を共有し解決していくことが、会社の安定した経営や長期的な成長につながっていくのです。

また、企業別組合をこえて、産業別や地域別の労働組合とつながり、情報を交換し、労働者の課題を解決していくことは、社会全体が働く人の権利を考え、働き方や暮らしを改善していくことにもつながります。


いかがでしたでしょうか?


労働組合には長い歴史があり、国や地域、産業や職業などの特徴にしたがって様々なかたちがあります。

時代とともに、かたちや役割も変化していますが、変わらないのは、労働者が主体的に、自分たちの働く場所、環境、働き方の問題について考え、解決するために行動するということです。そのとき、一人の力でなく、仲間と力を合わせて取り組むということが、いきいきと働き暮らせる社会をつくることにつながるといえるでしょう。