最近の日本の労働組合事情ってどうなっているの?

最終更新日2021/8/2

労働組合、そういえば入っているけど、これってふつうなの?

先輩は入っているけど・・・自分は、よくわからないし、入らないでいいや。

労働組合って、大企業のものでしょ?

フリーランスでも入れる労働組合があるって、本当?

中世イギリスに始まり、日本では明治時代以降からその歴史がある「労働組合」。

資本主義の広がりとともに「資本家(経営者)」と「労働者」の役割が固定化し、労働者が増えるとともに、労働条件や職場環境などをめぐって、資本家(経営者)と労働者との間の対立も増えました。労働者が、自分たちの経済的地位等の向上を目指し、団体交渉が始まったことが、労働組合の始まりといわれています。

それでは、現在の日本における労働組合事情は、どうなっているのでしょうか?

日本では、厚生労働省が、毎年「労使関係総合調査(労働組合基礎調査)」を発表しています。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/13-23.html

今回は「令和2年労働組合基礎調査の概況」を参考に、最近の労働組合事情をチェックします。

また「働き方の多様化」とともに、労働組合をめぐる変化についてもまとめています。

労働組合数・組合員の状況は?


「令和2年労働組合基礎調査の概況(厚生労働省)」によると、令和2年6月30日現在、日本における単一労働組合(※)の労働組合数は23,761 組合、労働組合員数は1,011 万 5 千人で、前年に比べて労働組合数は 296 組合(1.2%)減、労働組合員数は 2万8千人(0.3%)増加しています。

労働組合員数は3年連続で1,000万人台を維持し、6年連続の増加になりました。

また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は17.1%で、前年より0.4 ポイント上昇しました。推定組織率は、前年まで過去最低を記録し続けており、上昇に転じたのは11年ぶりです。

一方、令和2年6月の雇用者数は5,929万人(総務省「労働力調査」)で、こちらは前年より94万人減少しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響など経済活動の停滞により雇用者数は減ったものの、労働組合へ加入する人が増えたため、推定組織率が増えた結果となります。

なお、女性の労働組合員数は 343万5千人で、前年に比べ 5 万人(1.5%)の増、推定組織率(女性雇用者数に占める女性の労働組合員数の割合)は12.8%となっており、前年より0.4 ポイント上昇しています。

※単一労働組合とは、労働者が直接に加盟している労働組合であり、連合体は含みません。また企業別組合において事業所ごとなどに支部・分会がある場合は、最上部の組合である本部組合を指します。

パートタイマーは労組に入っているの?

パートタイマーも労働組合に入っています。

同じ調査資料によると、令和2年6月30日現在、労働組合員数(単位労働組合(※))のうち、パートタイム労働者は 137万5千人で、前年に比べて 4万2千人(3.1%)の増、全労働組合員数に占める割合は 13.7%で、前年より0.4ポイント上昇しています。

また、パートタイム労働者数に占めるパートタイム労働者の労働組合加入者数を示す推定組織率は 8.7%で、前年より 0.6 ポイント上昇しています。

パートタイマーとして雇用される人の数は増加していますが、令和2年は雇用者数全体の減少とともにパートタイマーの数も減少しました。一方で、労働組合に加入したパートタイマーが増え、組織率も上昇した結果となります。

パートタイマーの労働組合加入者数が全労働組合員数に占める割合や、パートタイマーによる推定組織率ともに、過去最高の数字となっています。

※単位労働組合とは、労働者が直接に加盟している労働組合で、上部団体を構成する下部組織・最小単位。上部団体との関係では支部・分会と呼ばれることもあります。

企業規模別の労働組合の状況は?

民営企業の労働組合員数(単位労働組合)は 876万3千人で、前年に比べて5万9千人(0.7%)増加しました。

これを企業規模別にみると、1,000 人以上規模が 576 万 9 千人で、全体の 65.8%と6割以上を占 めています。300~999 人規模が115万1千人(同 13.1%)、100~299人規模が58万6千人(同 6.7%)などとなっています。

労働組合への加入者数は回帰傾向!


ここまで見てきたように、直近のデータによると、労働組合への加入は回帰傾向にあるようです。

それは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で不安定な状況にある雇用や労働環境の問題に対処するため、労働組合の存在意義が改めて認識されたと考えることもできるでしょう。

一方で、労働組合に加入しているのは、依然として、比較的雇用の安定した大企業の正規雇用労働者が多くを占めているともいえます。

経済・社会情勢の不透明な状況が今後も続くとすれば、増加傾向にあるとはいえ、まだ少ない女性やパートタイマーの新規加入、中小企業の従業員による労働組合の組織化や新規加入なども、労働者が働きやすい環境を担保していくためにより一層注目されていくかもしれません。

フリーランスは労働組合に入れるの?

結論からいうと、フリーランスも労働組合に入ることができます

労働組合には、「職業別組合」「産業別組合」「企業別組合」「一般組合・合同組合」といった種類がありますが、「企業別労働組合」(特定の企業に所属する労働者が加入できる)以外は、雇用形態を問わず、フリーランスの加入を認めているものもあります。

働き方は多様化し、フリーランスやギグワーカー(インターネット上のプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負う労働者、日本ではプラットフォームワーカーと呼ばれることもある)が増加している中、労働条件などに関連する問題も増えてきました。

フリーランスやギグワーカーとして働くことは、個人のライフスタイルに合わせた働き方といわれ、利点もある一方で、その多くは「個人事業主」扱いです。労働基準法で保護されず、仕事中の事故等への補償がないことや、時給換算で最低賃金以下で働かされるなど、厳しい条件で労働を強いられている現状もみられます。また、ハラスメントや報酬未払いなどの問題が発生した際、個人で会社対し改善や対応を求めていくことが難しい場合があります。

このような状況から、フリーランスを対象とした労働組合やユニオン(※)の結成が相次いでいます。

例えば、フードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」の個人事業主である配達員たちは、2019年10月に「ウーバーイーツユニオン」を設立しました。「事故やケガの補償」「運営の透明性」「適切な報酬」を要求の3本柱として、会社側に団体交渉を求めています。

ウーバーイーツユニオンによれば、結果的に、今後も増えていくと考えられるすべてのプラットフォームワーカーが安心して働ける社会をめざし、労働条件の改善や法制度の整備に向けた活動を展開していくということです。

※ユニオンは「合同労組」を指し、一定の地域をベースに活動していることが多く、労働者であれば雇用形態によらず1人から加入できる労働組合です。中小企業など労働組合のない企業の労働者やフリーランスが加入しています。企業別労働組合などと比較し、その性質から、解雇やハラスメント、報酬未払いなどの具体的な問題に対し、団体交渉を主な活動としている特徴があります。

労働組合やユニオンの今後


いかがでしたか?

データを見ると、直近では、大企業における労働組合の組合員数や加入率が増加していることや、正規・非正規、またフリーランスやギグワーカーなどの雇用形態・働き方を問わず、労働組合へ参加し、または新たに設立するなどして、労働条件の改善を試みる動きが出てきていることがわかりました。

みなさんの職場環境や働き方と比べ、実感がありましたか?

新型コロナウイルス感染症の拡大による社会・経済情勢の不安定さや、一方で、テクノロジーの進化や働き方・ライフスタイルの多様化がますます発展する中で、わたしたちが安心して働き続けるための一つの手段として、労働組合やユニオンといった存在が改めて認識されています。

労働組合やユニオンの活動が社会へ与える影響について、今後も注目していきたいですね。